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税理士のためのDX徹底解説!〜DXとは何か、必要な理由、取り組み方、メリットまで〜
会計業界でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を見聞きする機会が増えています。
このように新しい概念や言葉が社会に広がりつつある時、一時のトレンドで終わる場合と、社会のベースとして定着していく場合がありますが、DXに関しては間違いなく後者でしょう。例えば「SDGs」と聞いて、今や知らない人は少数派、むしろビジネス面でも生活面でも皆が目指すべき概念として浸透しているように、DXについても、各国が国レベルで推進し(日本も)、世界的に定着しつつある考え方となっています。
つまり、企業活動を支える税理士・会計士が「知らない・わからない」では済まされず、むしろDXを実践・支援する立場になっていくことが求められているのです。
とはいえ、まだまだ新しい考え方なので、
「聞いたことはあるがよくわかっていない」
「税理士としてどう対応すべき?」
「会計事務所がどのようにDXに取り組めば良いか?」
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで、こちらの記事では、DXとは何かという点から、税理士にDXが必要な理由、DXへの取り組み方など丁寧に解説していきたいと思います。
目次
1.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?
2.IT化(デジタル化)との混同に注意
3.誰もが知るDXの成功事例
-映画レンタルの事例
-Amazonの事例
4.なぜ税理士や会計事務所にDXが必要か?
-①税理士として生き残るため
-②良い人材を確保するため
-③国の施策に対応するため
5.会計事務所におけるDXの取り組み方
-ペーパーレス化
-クラウド会計の活用
-コミュニケーションツールの導入
-RPAなどによる自動化
-最大のポイント「経営者のリーダーシップ」
6.まとめ(DXのメリット)
1)DXとは何か?
DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。ウメオ大学(スウェーデン)の教授エリック・ストルターマン氏が論文内で提唱した概念で、「IT技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でよい方向に変化させる」と述べられています。この概念が各国に広まっていく中で「デジタルによる変革」という意味合いが強まり、日本では2018年に経済産業省がDXについて次のように定義しました。
『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』
引用:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
この定義にあるように、DXにおいて重要視されるのは「変革」。単に「データとデジタル技術を活用」するだけでは不十分です。「データとデジタル技術を活用」した上で、新たなビジネスやサービスを創出したり、新たな価値を提供したり、組織そのものや働き方などを転換したりと、顧客や企業・働き手の価値観までを含めた「変革」がDXの目指す先なのです。
2)IT化(デジタル化)との混同に注意
DXとよく混同されがちな概念に「IT化」(デジタル化)があります。※IT化とデジタル化はほぼ同義。
言葉としては一見似ているのですが、DXとIT化は目的が全く違うので注意が必要です。
まずIT化は、デジタル技術を活用することで、業務の効率化を図ることを目的としています。例えば、「各伝票などを電卓で計算し、手書きで帳簿に整理する状態」から、「Excelや会計ソフトを使って帳簿を作成する状態」へと変化し、経理業務が効率化したならば、それはIT化です。
一方、DXは前章でもお伝えした通り、ビジネスモデルや価値観・働き方などへの「変革」が起こる状態を目的としています。例えば、会計ソフトのデータを顧客管理や原価管理に活かし、業務フローや製品開発などの変革につなげていく場合、それはDXに該当するでしょう。つまり、DXを考える段階においては、IT化は既に浸透している前提であり、その上で、更なる変革を目指すのがDXなのです。
3)誰もが知るDXの成功事例
では、より理解を深めるため、DXのわかりやすい事例をご紹介します。
<映画レンタルの事例>
ひと昔前、映画は映画館で見るか、レンタルビデオ店で借りてきて家のTVで見るか、そのいずれかが主流でした。
その後、社会のデジタル化が進み、アナログなVHSビデオはDVD等のデジタル媒体へと移り変わっていきます。ただ、この時点でもまだ、DVDは借りてくるもの(もしくは買うもの)でした。
しかし、一層のデジタル化が進んだことで映画のデジタル配信が可能になり、VHSやDVDといった物質の状態は必須ではなくなっていきます。人々は、見たい作品に代金を支払い、配信を購入するようになりました。
更にその後、NetflixやHuluのようなサブスクリプション型のサービスが浸透すると、人々は個々の作品に代金を支払うのではなく、「見たいときに見たいものを見られる」という状態に代金を払うようになります。
まさにデジタル化の進展によって、ビジネスモデルや人々の価値観が大きく変化していることがよくわかるDX事例と言えるでしょう。
<Amazonの事例>
元々Amazonは、インターネット上の書籍販売からスタートしました。しかし、書店の販売業務をデジタル化しただけに留まりません。徐々に取扱商品の幅は広がり、今ではあらゆるものを購入することができます。
このAmazonの出現により、人々はインターネットを通じて気軽に日常の買い物をするようになりました。つまり、Amazonは、「モノ・サービス=店頭で販売するもの」というビジネスモデルを根幹から覆し、「モノ・サービス=店頭で買うもの」という人々の意識や行動も変革させたのです。
なお、Amazonでは、商品ページの下部にて関連商品の提案が必ず付いてきます。これは店頭販売で言えば、「販売員の経験値によるオススメ」をデジタル化したものと言えるのではないでしょうか。
また、商品販売のみならず、「prime video」「prime music」のように、動画や音楽の配信サービスでも大きな支持を集めています。上述したNetflixやHulu同様、動画や音楽を共有するプラットフォームとしての役割も果たしているのです。
このようにAmazonは、企業活動、消費者の行動、人々の価値観、物流サービス、販売手法など様々なものを「デジタル化」によって「変革」させた存在であり、「DXのお手本」とまで言われています。
4)なぜ税理士や会計事務所にDXが必要か?
では、何故「DX」が税理士や会計事務所に必要なのでしょうか。大きく3点に分けてその理由をご説明します。
①税理士として生き残るため
非常に直接的な表現になりましたが、DXには税理士としての「生き残り」がかかっていると言っても過言ではありません。
皆様もご存知の通り、テクノロジーやAI技術の高度化により、会計ソフト等の機能も格段に向上した結果、各企業が会計業務を自前で行えるようになってきています。記帳業務や仕訳、試算表や決算書の作成作業を税理士に頼らない時代も現実に見えているのです。つまり、それらの「作業」を主戦場としている限り、将来はひたすら先細りになってしまいます。
今後、税理士は「作業」ではなく、得られた各種データを元にした経営戦略や資金繰り、業務効率化・生産性向上などに関するコンサルティングやサポートなど「高付加価値のサービス」を、これまで以上に主戦場としていかねばなりません。まさに、顧問先のDXを支える存在にシフトするとお考えください。
なぜそれが税理士にできるかと言えば、税理士ほど経営者(決裁権者)と近い職業は他にほぼないからです。税理士は、定期的に経営者(決済権者)と直接話すことができます。また、財務や会計など企業の中枢にあたる情報も日頃から理解できています。だからこそ、経理自動化のアドバイスなどをはじめ、経営戦略やビジネスモデルの変革など、顧問先のDX化について、より具体的な提案ができるのです。この機会と信頼をどれだけ活かせるか、ここに税理士の生き残りがかかっています。そのためにも、まずは税理士自身が、自事務所においてDXを体現する必要があるのです。
②良い人材を確保するため
お題目のように掲げられていた「働き方改革」が、コロナ禍に迫られる形で強力に推進され、今や、多様な働き方やそれを求める価値観が社会全体に浸透しています。会計業界も例外ではありません。
これまで会計事務所は、紙の取り扱いなどに縛られる形で出社を余儀なくされていた側面もあったかと思いますが、DX推進を掲げ、アナログ→デジタルの流れを加速させることができれば、柔軟な働き方に対応できる上、業務フローの改善や効率化、生産性向上も実現できるでしょう。
そして、そのような良い環境を整えることで人材の流出も抑えられますし、優秀な人材の確保にも貢献します。逆に、そのような環境を準備できなければ、ただでさえ人手不足の中、人材の流出や採用難のリスクは増大する一方です。
③国の施策に対応するため
経済産業省が推進する「DX認定制度」という取り組みをご存知でしょうか。認定を受けるには「デジタルガバナンスコード」と呼ばれる基準に達している必要がありますが、すべての事業者が申請可能な制度であり、認定された暁には、DXに対する先進的な取り組みを行っている「DX認定事業者」として公表されるほか、税の優遇など様々なメリットがあります。
この施策について、顧客から質問や相談を受けることもあるでしょう。その際に税理士として「DX」をしっかり説明できることやサポートできることは、今後ますます必要になると考えられます。
5)会計事務所におけるDXの取り組み方
では、会計事務所において、どのようにDXを実現していけば良いのか、具体的に見ていきましょう。キーワードとしては、以下の4点です。
●ペーパーレス化
●クラウド会計の活用
●コミュニケーションツールの導入
●RPAなどによる自動化
◆ペーパーレス化
先々の理想としては、全てのお客様との間でクラウド上のストレージサービスなどを使い、日頃の資料のやり取りから全てをペーパーレスにすることです。そうなれば、リアルタイムでの情報共有が叶い(「事務所に戻らないとわからない」という事態を避けることができ)顧客対応への機動力が増す上、紛失のリスクも、送付や保管の手間も削減できます。
しかし、これまで紙文化で成り立ってきた業務を、ある時点から一気に「ペーパーレス化」するのは現実味が乏しく、お客様やスタッフのよほどの理解と協力がない限り、かえって不便さや混乱を招くこともあるでしょう。
そこで、オススメとしては、まず「ペーパーストックレス」から取りかかることです。既存の紙資料について、以下の分類を試みます。
●処分するもの:他の手段で確認できるものは処分する
●データ化して残すもの:スキャナーでPDF化するなどデータ化して残す
●紙のまま残すもの:残す義務のある書類などは従来通り紙保管する
この分類が実現するだけでも、事務所内の紙の量は格段に減るのではないでしょうか。
おそらくこの作業自体が非常に腰の重い作業かと思いますが、紙資料の保管については、処分やスペースの観点で多くの事務所が頭を悩ませており、いつか取りかからねばならない問題です。思い切ってやる価値は非常に大きいため、ぜひDXを念頭に切り込んでみてください。
その上で、今後の資料の追加の際や、新規顧客について、「最初からデータで受領する/それが叶わぬ場合はすぐにデータ化しておく」など、徐々に切り替えていきましょう。なお、「データでのやり取りが可能な場合は料金を割引する」など、顧客に直接的なメリットを提示する手法でペーパーレス化を進めていくことも有効です。
◆クラウド会計の活用
クラウド型会計システムを導入し、銀行口座やクレジットカードなどとの連携機能によって自動仕訳が実施される体制を目指します。もしクラウド会計システムに情報を一元化できれば、
・お客様とリアルタイムで数値を共有できる。
・クラウド会計システム上で試算表なども随時見ることができるため、
月に一度の試算表作成・送付などの行程をなくすことができる。
・自動仕訳機能により概ね仕訳が完了するため、専門スタッフが
一から仕訳を手入力することなく、チェックや修正をするだけで済む。
など、業務フローの変革や効率化がかないます。
また、通帳コピーや各種明細・領収書の送付などを省くという意味では、「ペーパーレス化」の一環でもあります。
◆コミュニケーションツールの導入
ビジネスチャットやオンライン会議システムなど、タイムリーかつ利便性の高いコミュニケーションツールを導入することで、所内の連絡を効率化するとともに、場所を問わない柔軟な働き方を推進することができます。
また、顧客対応の面でも、オンライン会議を活用できれば、訪問にまつわる準備をお互いに削減することができたり、タイムリーな画面共有やExcel上のシミュレーションでわかりやすい説明が実現したり、とメリットも多いでしょう。チャットの活用についても、相手の業務を遮ることなく、互いのタイミングでスムーズに連絡が取り合える上、文字やファイルの状態で履歴が残るため、より確実なやり取りにつながるという側面もあります。
◆RPAなどによる自動化
RPAとは一言で表せば、「人が指示した通りに、PC上でマウス操作やキーボード操作を行うことができるロボットのこと」です。
会計業界には、ご存知の通り、PC上で操作する作業が山ほどありますが(例:入力・登録・転記・出力・チェックetc.)、このような単純作業はRPAの最も得意とする分野であり、どんどんRPAに任せていくことで、作業のスピードや正確性を一気に向上させることができます。
また、最近ではAI-OCRについても実用に値するレベルになってきており、印刷物や手書き書類の読み取り&データ化も可能となりました。データ化が叶えばRPAの処理対象になりうるため、ますますRPAの活用範囲は広がっていくでしょう。
このようにテクノロジーを活用し、人が人にしかできない業務に専念できるようになることで、残業削減など働きやすい環境の実現や、顧客とのコミュニケーション強化、採用や育成への注力、新サービスの発案など、職場や顧客対応に変革を起こすことができるのです。
◆最大のポイント「経営者のリーダーシップ」
ここまで4点のキーワードをご紹介しましたが、この4点以上に必要なのが「経営者のリーダーシップ」です。
従来のやり方からの変革には抵抗が付き物。お客様からもスタッフからも、ネガティブな声の上がるタイミングがあるでしょう。しかし、たとえそのような状況になれども、経営者は、「DXが事務所の生き残りに必須であること」や、「DXが実現した暁には、より良い職場環境や顧客関係があること」を粘り強く浸透させ、変革を引っ張っていかねばなりません。徐々に効果が実感されてくれば浸透も早くなりますので、効果の見えにくい最初こそ抵抗が強いものだと想定し、一歩ずつ着実に、ぶれることなく取り組んでください。
なお、実際の運用としては、会計業務を兼任しないDX専任の担当者を置き、そのメンバーを中心に様々な施策を実践するやり方をおすすめしております。(兼任の場合、負荷が高くなり、繁忙期には稼動できないなど取り組みが不十分になるため)
6)まとめ(DXのメリット)
以上、DXについて、その定義や必要な理由、取り組み方などをお伝えしてきました。あらためてDXのメリットをまとめますと、主に以下の通りです。
●圧倒的な業務効率化、生産性向上
●紙管理コスト、作業ミス、人手不足などのリスク回避
●従業員の働きやすさUP、満足度向上、採用の質の向上、育成の充実
●付加価値の高いサービスや新サービスの実現
(顧客への経営コンサルティングやDX推進サポート、同業界へのDXコンサルなど)
↓↓↓
事務所としての生き残り・競争力強化
いかがでしたでしょうか。
今後、DXに対応できた事務所とそうでない事務所の格差はどんどん広がっていきます。そうならぬためにも、ぜひ今の内から徐々に取り組み、DX型会計事務所となって、顧客とともにより良い企業未来を切り拓きましょう!
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